実験方法
サンプル調製
1.細胞や組織などの試料からDNA抽出キットを用いて、DNAを抽出します。
2.EzApplyDNA (6×濃度)1µLに、抽出したサンプル5μLを加えて混合します。
【パラフィルムを使用して試料調製する場合】

パラフィルム上にEzApplyDNAを1µL滴下し、そこに抽出したサンプル5μLを加え、ピペッティングで混合します(左図参照)。
ゲルの作製
サブマージ ミニでは、ゲルトレイ(L)1枚あたり25~40mL、(S)1枚あたり15~20mLのアガロースゲル溶液が必要です。
アガロースゲル溶液量はゲルの厚さにより異なり、最適なゲル厚は4~6mmです。
ゲルが厚いとバンドがぼやけて見えたり、バックグラウンドが高くなる原因にもなります。
1.分離するDNAの大きさに応じて、アガロースを目的濃度になるように秤量します(下表参照)。
アガロースゲル濃度(w/v) |
分離するDNAのサイズ(bp) |
0.6% |
1,000~20,000 |
0.7% |
800~10,000 |
1.0% |
500~7,000 |
1.2% |
400~6,000 |
1.5% |
200~3,000 |
2.0% |
100~2,000 |
ゲルバッファー量(mL)×ゲル濃度(%)=アガロース量(g)
例えば…1.0%のLサイズのアガロースゲルを作製したい場合
40mL(ゲルバッファー量)×1.0%(ゲル濃度)=0.4g(アガロース量)
0.4gのアガロースを40mLのゲルバッファーに溶解し、ゲルを作製する。
2.1.にゲルバッファー(1×EzRunTAEまたは1×EzRunTBE)を必要量添加します。
3.電子レンジまたは湯せんで加熱し、アガロースを完全に溶解します。
※溶解後のアガロースゲル溶液は突沸する可能性があり、非常に高温のため、火傷をする恐れがあります。必ず耐熱手袋をして作業してください。
※加熱中のアガロースゲル溶液の突沸を防止するために、溶液量の2~5倍の三角フラスコやビーカーを使用することをお勧めします。
4.アガロースゲル溶液を約60℃くらいまで冷まします。
※高温のアガロースゲル溶液をゲルトレイに流しこむと、ゲルトレイが変形することがありますので、必ず冷ましてください。
5.適温に下がったアガロースゲル溶液をゲルトレイに流します。
※ゲル中に空気が入らないようにゆっくりと静かに注ぎいれます。
※空気が入ってしまった場合は、チップの先などでつついて、空気を除去します。
6.ゲル溶液が固まる前に、ゲルトレイにコウムをセットします。
7.ゴミが入らないようにラップをかけ、室温で30~60分静置してゲルを固めます。作製したゲルは1×EzRunTAEまたは1×EzRunTBEバッファー中で約1週間、冷蔵保存が可能です。
※EzPreStainDNA&RNAはゲル溶液、泳動bufferに添加による先染めが可能です。詳細は製品取扱説明書を参照ください。
電気泳動
1.作製したアガロースゲルをゲルトレイごと電気泳動槽(サブマージ ミニ、電源搭載型電気泳動装置)に入れます。
※ゲルトレイについた余分なゲルは取り除いておきます。
2.電気泳動槽に泳動バッファー(ゲル作製に使用したものと同じバッファー)を200~230mL入れます。
3.調製したサンプル溶液を空気が入らないように、ゆっくりアプライします。
4.上部カバーをセットします。
5.下表を参照し、泳動条件を設定して、スタートボタンを押して電気泳動を開始します。
設定電圧 |
設定時間 |
50V
|
60min |
100V |
30min |
150V |
20min |
ワンポイントアドバイス【泳動バッファーの量はゲルの上面より1~3mm上までいれる】
泳動バッファーの量が多すぎると、ゲル上面部位のバッファー中を流れる電気が多くなるため、泳動時間が長くなります。
また、泳動パターンの乱れの原因にもなりますので、バッファー量の入れすぎには注意が必要です。
ゲルの染色と撮影
1.50mLの1×EzRunTAEまたは1×EzRunTAEにEzFluoroStainDNAまたはEzPreStainDNA&RNAを5µL添加し、混合します。
※EzFluoroStainDNAやEzPreStainDNA&RNAが完全に溶解せず、不溶物が見られることがあります。
その場合は、まず蒸留水500µLでEzFluoroStainDNAまたはEzPreStainDNA&RNAを5µLを希釈し、その後1×EzRunTAEまたは1×EzRunTBEを添加し、50mLの染色液を作製します。
2.上部カバーを外し、ゲルをゲルトレイごと取り出します。
※電気泳動直後は、泳動バッファーが高温になることがあります。火傷に注意してください。
3.樹脂製のタッパーに染色液を入れ、その中に泳動後のゲルを入れて、浸漬します。この時ゲルトレイは外し、ゲルのみを染色液に入れます。
※必ず樹脂製のタッパーを使用します。ガラス容器を使用すると、蛍光試薬がガラスに吸着します。
4.タッパーをアルミホイルなどで遮光し、室温で10~30分間インキュベーションします。
5.インキュベーション後、ヘラなどを使用して、ゲルを慎重に取り出します。
※脱色操作は不要です。染色後の染色液は4℃で約1週間、遮光保存が可能です。
6.取り出したゲルは、撮影用トレイまたはラップの上にのせます。
7.ゲル撮影装置にゲルをセットし、Cyan LED またはUV光源で励起し、撮影します(下表参照)。
UV励起 |
260~370nm |
フィルター:500~580LP |
Cyan LED励起 |
440~500nm |
フィルター:500~580LP |
自作の場合
下表は、アガロースゲル電気泳動で使用する主な試薬の組成です。
より再現性良く、簡便に実験を行う際は、ぜひアトーの試薬をご利用ください。
試薬名 |
組成 |
ローディングバッファ(5×Conc.) |
50% Glycerol,1mM EDTA(pH8.0)、0.25% Bromophenol Blue0.25%、Xylene Cyanol FF |
TAE バッファー(50×Conc.) |
2M トリス、1M 酢酸、50mM EDTA |
TBE バッファー(10×Conc.) |
500mM トリス、485mM ホウ酸、20mM EDTA |
染色液 |
10mg/mL エチジウムブロマイド、1×TAEまたは1×TBEバッファー |
エチジウムブロマイド(EtBr)を染色に使用する場合は、以下のような手順で行います。
エチジウムブロマイドは発がん性物質ですので、人体に接触しないように、取り扱いには十分気を付けてください。
1.50mLの1×EzRunTAEまたは1×EzRunTBEに50µLのエチジウムブロマイド(10mg/mL)を添加し、混合します。
2.染色液にゲルを浸漬し、アルミホイル等で遮光しながら5~30分間、染色します。
3.染色後、へら等を使用して、ゲルを慎重に取り出します。バックグラウンドが高い時は、蒸留水に浸し、30~60分脱色します。
4.ゲル撮影装置にゲルをセットし、UV照射で撮影します。